工事と安全について


       アマチュア無線にとってなくてはならないもののひとつにアンテナがあります。ローカル局の協力を得て建設工事を行うケースも多く、大変な作業です。

      このことは、大変危険な作業をやっているという認識を持っていなければならないと思います。アマチュア無線家が集まって、皆で楽しく作業をされている風景を時

      々見かけますが、安全帯は着用しているものの、ヘルメットの着用がなかったり、その他危険な状況での作業をされているケースが多いようです。せっかく楽しい

      はずの趣味の世界が、もし、人身や設備の事故が起きると家族を含め一瞬にして不幸となります。たまたま、偶然にして事故が起こっていないケースが多いようです。

      このコーナーでは、アマチュア無線のアンテナ工事において最小限守っていただきたいことを書きますので、安全について少しでも参考になればうれしく思います。


 個人の安全意識

       安全については、各業界や個人の方々もいろいろな取り組みや対策をおこなっておられますが、最終的なところ、事故は個人の認識や性格に大きく左右される

      と思います。 仮にヘルメットも着用せず、安全体も着用せず電柱を昇降したとします。一度最上部まで上って地上に無事降りてこられたのはなぜでしょう。

      そこには、「転落をしてはいけないので、こうしなければいけない」という、意識が働いているはずです。しっかり足場ボルトを握る、足を踏み外さないように確認をする、

      足場ボルト等で頭を打たないように周囲を確認する。など自分では気づかないうちにこれを実行しているからではないでしょうか。対照的に、無防備でこのような

      ことにまったく気を使わない人は転落の可能性が高いですね。もし、このような事象が発生したときに被害を最小に食い止めるものが転落防止対策用具なのです。

      転落対策として安全帯(胴綱)をしているから「安全だ」ではないのです。もうひとつ、自分自身の他に、第3者の安全や財産の確保についても考えておきましょう。

      一般的によくいわれることに、物の落下があります。高い場所から工具や物品を落下させると、相当の破壊力があります。もし、ボルトが通行人などの頭に当たると

      どうなるかおわかりですね。ましてや、モンキースパナみたいなものが頭に当たると・・・・、考えただけでもゾッとします。

      作業をする場合は、各人が自己責任で安全に対する意識を高めそのことを実行することが大切なのです。周囲がうるさく言っても本人が認識をしなければ無意味です。

      よくみていると、事故や失敗は同じ人が何回も起こす傾向があることを確信しています。自分や他人の命やからだは自分が守りましょう。まったく私個人の見解ですが

      事故は不具合な現場環境と個人のエラーが重なったときに発生しているように思えてなりません。
      
  
  

 工事前の打ち合わせをしよう。

      
      
     

     ローカル局と数人でアンテナ工事などを始める前に、みんなで今日の作業内容や誰が何をするか、工事の手順、危険ポイントなどを話し合い危険予知をしましょう。

     業務であればこの点は法律によって義務付けられています。事故やミスを事前に防ぐために有効です。また、お互いの意思の確認をしましょう。ちなみに、私のいる業界

     では、3〜6人程度を1チームとして作業することが多いのですが、事前のミーティングには決まった手順と項目があり10分〜15分かかります。それをテープレコーダで

     録音して一定の期間保存しておかなければならないことになっています。それほど大事な位置づけなのです。


 ハッキリ指示してキッチリ確認をしましょう。
   

     作業をする前にはハッキリと指示をおこない作業が終わったらきちんと確認をしておきましょう。人に指示したことが自分が思っていたことと違った出来栄になってた

     ということが意外に多いものです。指示されたほうは「はいはい、わかりました」といいながら、ぜんぜん違ったことをやっていたというのもよくある話です。
  
  
  
 
 
 


 服装と作業靴


     服装は一般的には、動きやすくなるべく突起物の少ない構造になっている作業服が良いと思います。ポケットなどはできればチャック式等開きにくい構造になっているものが

   良いでしょう。それから、高所作業時はできるだけポケットの中に物は入れないようにしましょう。最近では多くの種類の作業服がありますので、作業用品店で確認されるとよい

   と思います。夏でも感電防止や皮膚の保護のため長袖をお奨めします。また、ズボンの裾はバンドで巻くか靴下の中に入れ込むなどひっかからないよう対策をしましょう。

     次に、作業靴ですが、安全靴と呼ばれる作業靴を推奨するのが一般的ですが、私個人の見解として、鉄塔や雨の日の作業は靴底が硬いため滑りやすく状況によっては不安

   が残ります。従って、作業環境に応じて選定されることをおすすめします。

      ***** 余談 *****
        季節に応じた服装をされているとは思いますが、夏は熱中症などにならないように体調を整えておきましょう。こまめに水分補給や休憩を入れながら作業をおこない
       ましょう。鉄塔上など長時間降りてこられない場合は、落下防止対策を施して水筒などを用意しておきましょう。冬は逆に防寒対策が必要になります。私も長時間降りて
       こられないような作業のときは、鉄塔上に水筒を持ってあがったり、高所作業車のバケットの中に水筒を用意しています。あと、高所ではトイレに困ります。以前に鉄塔上
       でおなかの調子が悪くなったときは、冷や汗をかきながら降りてきました。
 
  


 事故事例に学ぼう


      過去、いろいろな業種で様々な事故が発生しています。アマチュア無線のアンテナ工事においても、過去、死亡事故が発生をしています。その他、事例をすべて挙げると、

     とても書ききれません。よくある事故事例を紹介しますが(通信工事関連)、過去に起きた事故を検証し、原因を追究しこれからの対策に役立てることは有効な策

     だと思います。業界ではこのような取り組みをおこなっているにも関わらず同じような事故が続いています。私が思うに、いつかは風化してしまって忘れ去られ同じような事故

     が発生するのでは・・・と。今日する作業について過去に同じような事故事例をもう一度思い出し、緊張感をもって作業することが大切ではないかと思います。事故歴史を

     みてもヒューマン・エラーってなくならないのですね。
   

 作業時間と工程

      行う作業の量に余裕を持った作業時間設定をしましょう。作業量とその時間は安全や出来栄え(品質)に大きな影響を及ぼします。多くの作業量を無理な工程をたてて

     作業をおこなうことはできるだけ避けて、当日終わらなければ後日おこなうという勇気を持ちましょう。

     これが、仕事になるとなかなかそうもいかず、安全は厳しく言われながらも短い工期内に・・・・という矛盾はいつものことです。
  
  

 天候の確認と対応

    
 
天候もまた、安全を考える上で重要な事項です。雨、雪、風などには十分な配慮が必要です。また、作業中に急に天気が悪くなり雲行きが怪しくなったらすぐに作業を

     中止しましょう。アンテナ工事で怖いのが落雷です。雷の音が聞こえたらかなり近いですので、即刻安全な場所へ避難しましょう。ラジオの雑音で確認するのもよいでしょう。

     同業者の話ですが、あるビルの屋上で作業をしていて、急に天候が悪くなったので、避難しようと片付けを急いでいたところ、いきなりすぐ隣のビルに落雷があり命拾い

     したと話してくれました。こんなこともあるのです。
 
  

 隣接する既設構造物と上空占用
  
    

     アマチュア無線局のアンテナを設置するとき、上空を占用する面積や既設構造物との離隔を考えて設置場所を決めましょう。特に、ローテーターなどで回転させたとき、
     
    
    
    

    既設物との距離が変化します。中には送電線などのように、離隔が規定で決められているものもありますので管轄の電力会社へ確認をしましょう。

    鉄塔に架線してある高圧送電線にクレーンのアームが近づいて、接触はしてないのですが放電した事故も実際に起きています。通常電柱に張ってある6600Vも危険です。

     それから、熱を発する場所や第3者の上空を占用しないように気をつけましょう。地権者や隣の方からクレームを言われるかもしれません。

    その他、公道や公地(一般には行政が所有管理している場所)の上空をエレメント等が通過・占用するときは、所有者または管理者の許可が必要です。場所により、地上

    からの高さなどが決められていて、決まった様式の申請が必要です。物によっては許可にならなかったり、占用料金が発生することがあります。
                                      
  
 
 

 構造物の高さ制限


     鉄塔やポールを建てるときには、空港から一定の距離に航空法による構造物の高さ制限があります。

     特に鉄塔やビル屋上に大きな構造物を設置する場合は注意が必要で、市役所の建築指導課等や運輸省航空局空港事務所などに確認をしましょう。

     管轄の空港事務所へ確認するときは、該当場所の緯度経度または住宅地図などに示して、ハッキリした位置を伝えましょう。

     資料を添付して確認をすれば、文書で回答をしていただけます。この場合、該当場所での構造物の高さ制限は●●mと数値で回答をくれます。

     私は仕事上で、確認することも多いのですが、近年、問い合わせが多いので、回答まで時間がかかるので時間に余裕をもってくださいとのことです。

 電波伝搬の障害に関する事項

     アマチュア無線局の工事にはなじみが薄いかも知れませんが、マイクロその他の重要通信回路を保護するために確認が必要なことがあります。

     行政などの重要回線が通過する方位を「線」によって電波伝搬の方向を示した地図があり、特にビル屋上にアマチュア無線局のアンテナを設置するとき、

     また、クレーン作業をするときなど、その電波の直進方向に障害をきたさないか確認を要します。 これは、総合通信局に問い合わせをしてもいいし、

     役所の建築指導課等で閲覧もできます。 もし、その電波の伝路にあたる場合は、具体的な資料をもって、総合通信局へ協議を求めることになります。


 ご自分で初めてタワー・アンテナを建設される方へ
                                                    HOME