自 分 で 行 う 工 作 物 申 請

15m高以上のタワーを建設するには建築基準法による工作物の申請が必要になりますが、ご自身で申請手続きをされる方に許認可取得までの流れをご説明しますので、ご参考にしていただければと思います。(工作物についての設計や申請においては建築士の資格は必要としません)
申請様式は各県のホームページからダウンロードできるようになっていると思います。一般工作物です。

申請の方法は、行政から委託を受けた民間の機関に提出するか、または県へ直接申請する方法がありますが、私はいつも県へ直接申請しています。直接申請した方が、費用も若干ですが安く済みますし、許認可を交付する機関と直接やりとりできるため処理が早く好都合です。

まず、計画地に法規制(別ページで紹介しています)の適用がないか確認します。あれば関係部署へ相談を行い、必要に応じ申請をします。なければ工作物の申請にかかります。 おおまかな流れは次のようになります。但し、ここでは近隣の了解やその他支障となる事項はすべて解決済みという前提です

@法規制の確認と申請 → A建設位置の地盤調査及び地盤改良の検討 → B構造計算書の作成(取得)と全体設計 → C事前打ち合わせ → D確認申請事前審査 → E工作物申請 → F確認済証取得(建築基準法第6条第1項の規定による) → G着工(建設工事) → H検査を受けて検査済証の取得(建築基準法第7条第5項の規定による)

申請書が受理されても必ず許認可が交付される保証はありません。

申請にはそれなりの時間と根気が必要です。


@法規制の確認と申請
建設地に法的な規制がかかっていないかどうか確認します。もし、かかっているようであれば行政等へ事前に相談に行き、申請を行います。

A建設位置の地盤調査及び地盤改良の検討
建設地の地盤を調査試掘します。タワーの基礎を支えるためのじゅうぶんな地耐力その他があるかどうかを確認します。一般的によく採用している方法は、「ボーリング調査やスエーデン式サウンディング方式です。調査の結果、どういう地盤改良をしたらよいか検討をします。 これらの作業は自分でするのは難しいので、業者へお願いしたほうが良いです。 建設関係の地盤調査を行っている業者であれば地盤改良の設計提案や施工まで行っている業者も多いです。
工作物申請用のタワーの基礎図を事前に入手して、地盤調査を依頼するタイミングで業者に渡しておいて、調査結果に基づく地盤改良の方法も検討していただきましょう。 提案設計、計算書の作成をしてもらいます。 ここでいう地盤改良とは基礎の補強といった意味合いもあります。
地盤の状況により、杭をどの大きさで何本打てばよいかや、ステコンをするとか、その他の補強方法が決まります。 また、地盤の悪い地区では行政により基礎補強の方法が決められていることがありますので、確認が必要になります。
改良検討書や設計書の図面には必ず設計者の氏名を記載し認印を押します。 


B構造計算書の作成(取得)と全体設計
タワーの構造計算書を入手します。メーカー製造のタワーを購入するのであれば、メーカーが工作物申請用の「構造計算書」を準備していますので、購入する等します。自分で設計するにしても、設計士さんから設計してもらうにしても、構造計算書は必要です。
ここでの注意点は、工作物申請をするための構造計算書を準備します。あるメーカーの商品では取り扱い説明書での基礎寸法や構造は簡易型なので工作物申請の必要とする条件を満たしておらずNGです。別に工作物申請用の構造計算書がありますのでそちらを入手してください。
次に、全体の設計を行います。敷地を採寸して図面を作成しなければなりません。一般的にいう、「立面図」「平面図」です。この図面は縮尺と方位が間違えなければ、手書きでもCAD書きでもかまいません。これはメーカーにはありませんので自分で作成します。
立面図にはアンテナを装着していないタワー本体だけの図面を記載するようにします。(付帯設備は書かない)
これらの構造計算書内の図・立面図・平面図・地図・位置図には全て設計者の氏名を記載し認印を押します。(メーカーから入手した構造計算書の図には設計者の氏名と押印はしてあると思います)
立面図・平面図作成にあたり、同一敷地内に小屋等の建築物がある場合、その建物について建築確認がなされているか、また受験済みであるか確認されることがあります。行政には資料がきちんと残っており、なければ無申請物件と判断され、タワーの工作物申請に影響するかも知れません。最近は不法建築物の増加や震災の影響で厳しくなっています。
平面図の一例 立面図の一例 構造計算の一例

C事前打ち合わせ ・ D確認申請事前審査
上記@〜Bの作業が終わり、地盤改良設計関係資料と構造計算書、図面がそろったら建築確認審査受付担当部署へまず相談に行きます。詳細説明をして可否を聞きます。問題がないようでしたら、決まった様式に必要事項を記載し提出します。ここでは、「建築確認事前審査願い出書」の提出です。これは予備審査的なもので、本審査の前に内容に問題がないかどうか審査を行うものです。これに合格すれば工作物確認申請を提出しますが、事前に審査が終了しているため、交付まで時間がかかりません。「建築確認事前審査願い出書」提出の時点では手数料は必要ありません。
行政によっては、予備審査方式を採用していないところもあります。
※ 「建築確認事前審査願い出書」は福岡県の場合は必要ですが、全国統一的に必要かは定かでありません。管轄の行政に確認してください。
  また、福岡県では、別紙で「コンクリート施工計画書」の提出を求められます。

E工作物申請 ・ F確認済証の取得
事前審査が終了したら、工作物確認申請を行います。様式は各行政担当部署のホームページからダウンロードできるようになっていると思いますが、念のため行政へ確認しておいたほうがよいです。この工作物申請には手数料が必要です。証紙を購入して決まった様式に張り付けて申請書と一緒に提出します。(地域によっては現金納付のところもあります) 提出書類は正副2部用意しておきます。
工作物申請の確認が終了したら「確認済証」が交付されます。 この時点で、着工が可能となります。

G着工
行政へ提出した図面を基に、材料や機材を準備します。基礎工事は大切な位置づけになるため、提出物と実際の相違があってはいけません。
土木業者へ依頼した場合でも、自分で施工する場合でも設計図書に従った材料を使用し施工します。
鉄筋の数量や太さ、コンクリートの寸法等、必ず認可された内容に相違なく施工します。
その証明として、施工写真は確実に撮影するようにしてください。隠蔽部は箱尺などでを使用して寸法がわかるように撮影します。工事終了後は撮影できませんのでお忘れなく。
鉄筋やコンクリートの納品書は必ず保管しておきます。本当に認可された材料を使用しているか納品書が証明になります。
また、メーカー製のタワーの場合はJIS規格の鋼材を使用となっていますので、納品書に当たる「ミルシート」をメーカーより入手しておきます。
基礎コンクリート打ちの時に、同時に強度試験を行います。事前にコンクリート会社へお願いをしておけば、全てしていただけます。
下の写真はコンクリート試験の様子です。 試験成績書の作成もお願いしておきます。
コンクリート打設が終わったら、コンクリート硬化に必要な日数を養生し、型枠を解体し埋め戻しを行います。
タワーの組み立てについては品質管理はどうしているか求められた場合、「トルク管理」と回答すればようでしょう。この場合も適正なトルクレンチでボルトナットの締め付けをされている施工写真を撮影しておきます。

H受験と確認済証の交付
認可を受けた内容通りの施工が完了したら、次は受験です。 受験したい旨を行政へ連絡して検査手数料を証紙を購入し納付します。(行政によっては現金納付のところもあります)
受験の日時を調整し、受験します。行政の検査官が現地へ来ての検査です。
この時には、地盤調査時から施工完了までの全ての成果物、資料や伝票及び工事写真を準備しておきます。 検査官から求められたものはその場で対応説明ができる資料を準備するようにしてください。 特に見えない部分の寸法や鉄筋の本数、その他すべて写真で確認されます。 ここで、相違が見つかると検査済証が交付されません。 このように、許認可内容に相違なく確実な施工と写真撮影は重要です。 問題なく検査が終了すると、数日後には「検査済証」が交付され終了です。

※ 共通の注意事項
@ 工作物申請において、構造計算や図面の作成につき資格は必要としませんが、代理人をたてて申請を行おうとする場合、代理人への委任状が必要で、また、その代理人になる者は行政書士または建築士の資格が必要です。代理人をたてると、その代理人が申請行為・連絡等の窓口になります。
A 構造計算をする場合(メーカーへ依頼する時も含め)、その地区での計算の元となる風力係数Voとランクが決められているので事前に行政に確認するようにします。これを間違えると誤った計算書となり受理していただけません。
B 最近は押印省略となっている申請書が多くなってきています。図面等は設計者の氏名だけ記入すればよいか、或いは印鑑まで必要なのか確認しておいたほうが無駄な手間が発生しません。
C代表となる設計者の他、その他の設計者が存在する場合はその他の設計者は「別紙」として別の用紙に記入します。